アミノ酸について
アミノ酸は、アミノ(NH2)基とカルボキシル(COOH)官能基の両方を持つ比較的単純な分子です。アミノ酸は進化的観点から見て、炭水化物、脂肪酸、基礎的栄養と並び太古から存在しています。20種類のアミノ酸は、成長、窒素平衡、宿主防御の維持、神経系(Fernstrom,2000;Young et al.,1994)や筋肉の機能、さらに遺伝子発現調節(Fafournoux et al.,2000)にとって最低限必要な成分です。アミノ酸の異化作用は、解糖経路とクエン酸回路の中間生成物を介してエネルギー源になります。しかし、体内に大量のアミノ酸を蓄えておくことはできず、全ての組織や器官を統合的に機能させて恒常性を巧みに維持していかなければなりません。従って、アミノ酸の所要量は健康に大きな影響を及ぼします (Rose, 1957;Millward,1994;Young,1998;Young and Borongha,2000)。9種類のアミノ酸は日常の食事において必須であると考えられていますが、年齢(Baertl et al.,1974;Schober et al.,1989)、栄養状態(Kurpad et al.,2003)、大きなストレスに晒されることなど行動心理学面の影響が明らかになったことで(Lacey and Wilmore,1990;Obled et al.,2002)、必須であるか否かの境界が曖昧になっています。実際に、2007年の「人間栄養におけるタンパク質およびアミノ酸の必要性」に関するWHO/FAO/UNU共同の専門家会議の報告書により、食品で提供されるタンパク質の品質に関する最近の研究へのシフトを反映し、ほとんどすべての必須アミノ酸の必要性が著しく高まりました。
また、アミノ酸はタンパク質の生化学的構成単位です(大型かつ自然界に存在するポリペプチド)。タンパク鎖はあるアミノ酸のアミノ基と別のカルボキシル基と連結することによって作られます。体内に吸収されたアミノ酸は、体内自身のタンパク質の再構成に使用されます。したがって、アミノ酸はタンパク質の基質として十分な量と適正なバランスで存在しなければなりません。アミノ酸発見の歴史は、1806年にアスパラガスの新芽の抽出物からアスパラギンを分離したことに始まり、1935年のトレオニンの発見まで続きました。工業生産については、調味料として使用されるグルタミン酸が小麦グルテン加水分解物からの抽出により得られた1909年にさかのぼります。1950年代には精製および分離技術の進歩により、多数のアミノ酸、特に発酵により生産されたアミノ酸の利用が拡大しました。現在では抽出、発酵、酵素法、化学合成の4つの生産方法が用いられています。
1956年以降、結晶アミノ酸は非経口の構成成分として、また後には経腸栄養法による栄養成分として医学および製剤分野で使用されています。例えば、高品質アミノ酸は炎症性腸疾患、クローン病、食物アレルギーの治療において栄養療法として用いられています。ある種のアミノ酸はACE阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害薬、抗ウイルス薬、抗糖尿病薬として利用されています。
多くの先進国では、アミノ酸は健常者の間でスポーツ時の栄養補給、循環器系の健康維持用、造血剤等として長い間、栄養補助食品や化粧品の主要な構成成分に利用されてきました。
- Baertl, J. M., Placko, R. P. & Graham, G. G. (1974). American Journal of Clinical Nutrition, 27, 733-742.
- Fernstrom, J. D. (2000). American Journal of Clinical Nutrition, 71, 1669S-1673S.
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- Rose, W. C. (1957). Nutritional Abstracts and Reviews, 27, 489-497.
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- Young, V. R., El-Khoury, A. E., Melchor, S. & Castillo, L. (1994). Nestle Nutrition Workshop Series, 33, 1-28, Vevey/Raven Press, New York.
- Young, V. R. (1998). Journal of Nutrition, 128, 1570-1573.
- Young, V. R. & Borgonha, S. (2000). Journal of Nutrition, 130, 1841S-1849S.