アミノ酸の分析

薬局方調和国際会議(PDG : Pharmacopoeial Discussion Group)は、欧州薬局方(EP)、インド薬局方(IPC)、日本薬局方(JP)並びに米国薬局方(USP)の試験法と医薬品各条について、調和活動を行う、薬局方に関する会議である。
(注)2023年10月に「日米欧三薬局方検討会議」から「薬局方調和国際会議」に変更された。
https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/standards-development/jp/0005.html

各国薬局方におけるアミノ酸の分析方法については、2016年10月26日に日米欧3極で合意され、2017年12月1日より施行されている。
https://www.pmda.go.jp/files/000215408.pdf

以下、分析法の概要を示す。詳細は各国の薬局方を参照して頂きたい。
日本:https://jpdb.nihs.go.jp/kyokuhou/files/000788362.pdf
米国:https://www.usp.org/harmonization-standards/pdg/biotechnology/amino-acid-determination
欧州:http://www.uspbpep.com/ep60/2.2.56.%20amino%20acid%20analysis%2020256e.pdf

アミノ酸分析法

方法 ポストカラム法 プレカラム法
原理 イオン交換クロマトグラフィーで遊離アミノ酸を分離した後に誘導体化して検出する。 遊離アミノ酸を誘導体化した後に逆相HPLCで分離する。
必要試料量 1分析当たり5~10 μgのたんぱく質 1分析当たり0.5~1.0 μgのたんぱく質
特徴 塩類や尿素などの少量の緩衝液成分を含む試料に利用することができる。
  • 感度が高い。
  • 試料中の塩類の影響を受けやすい。
  • 複数のアミノ酸誘導体を生じ,結果の解釈を複雑にする可能性がある。

アミノ酸分析法各論

方法 分析法 分離方法 検出波長 検出限界 直線性範囲 必要試料量
方法1 ニンヒドリンによる
ポストカラム検出法
イオン交換
クロマトグラフィー
570 nm及び
440 nm(プロリン)
約10 pmol
約50 pmol(プロリン)
20~500 pmol 1 μg 以上
方法2 OPAによる
ポストカラム蛍光検出法
イオン交換
クロマトグラフィー
励起:348 nm
蛍光:450 nm
数10 pmol
プロリン等の二級アミンは次亜塩素酸ナトリウムで酸化し、蛍光誘導体を生成させ、OPAと反応させる。
数pmol~数10 nmol 500 ng 以上
方法3 PITC
プレカラム誘導体化法
逆相HPLC 245 nm 1 pmol 20~500 pmol 500 ng 以上
方法4 AQC
プレカラム誘導体化法
逆相HPLC 励起:250 nm
蛍光:395 nm
約40~320 fmol
約800 fmol(システイン)
2.5~200 μmol/L 30 ng
方法5 OPA
プレカラム誘導体化法
逆相HPLC 励起:348 nm
蛍光:450 nm
50 fmol(実際は1 pmol)
プロリンは検出しない
- -
方法6 DABS-Cl
プレカラム誘導体化法
逆相HPLC 436 nm 約1 pmol 2~5 pmol 10~30 ng
方法7 FMOC-Cl
プレカラム誘導体化法
逆相HPLC 励起:260 nm
蛍光:313 nm
数fmol
ヒスチジン誘導体は分解していく。
0.1~50 μmol/L -
方法8 NBD-F
プレカラム誘導体化法
逆相HPLC 励起:480 nm
蛍光:530 nm
約10 fmol - 約1.5 μg*

* 米国薬局方及び欧州薬局方では、1.5mgと記載されている。
OPA:o-フタルアルデヒド
PITC:フェニルイソチオシアネート
AQC:6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメイト
DABS-Cl:(ジメチルアミノ)アゾベンゼンスルホニルクロリド
FMOC-Cl:9-フルオレニルメチルクロロギ酸
NBD-F:7-フルオロ-4-ニトロベンゼン-2-オキサ-1,3-ジアゾール