アミノ酸の必要量

必須アミノ酸の摂取基準を設定している国及び地域

ドイツ・オーストリア・スイス
韓国
米国・カナダ
WHO

(2024年8月現在)
出典:国立健康・栄養研究所 食事摂取基準の概要
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/foreign/kijun.html

日本における必須アミノ酸の必要量

必須アミノ酸の必要量(WHO)

アミノ酸 推奨量 引用文献
mg/kg/日 mg/kg/日 方法 番号
リジン 30 29 24時間指標アミノ酸酸化法 1)
31 24時間指標アミノ酸酸化法 2)
ロイシン 39 37.3 24時間[13C]ロイシン出納試験 3)
39.6 24時間[13C]ロイシン出納試験 4)
イソロイシン 20 20 体たんぱく質のアミノ酸組成に基づき、ロイシンの必要量39 mg/kg/日から算出 5)
バリン 26 26 同上 5)
スレオニン 15 15 24時間[13C]ロイシン出納試験 6)
15 24時間[13C]ロイシン出納試験 7)
フェニルアラニン+チロシン 25 - 複数の報告値の中間値
不確実な値である
-
トリプトファン 4 4 複数の報告値の中間値
そのうちの1つが指標アミノ酸酸化法
8)
メチオニン
+システイン
15 - 和を丸めた値 -
メチオニン 10 10.4 不可避窒素損失量(47.7 mg/kg/日)及び組織たんぱく質の含硫アミノ酸含量(肝臓と筋肉の平均値)から算出 10)~12)
システイン 5 4.1 同上 10)~12)
ヒスチジン 10 8~12 実験的に規定できていないため、過去の報告書を踏襲 13)
総必須アミノ酸 184
引用文献
  1. Kurpad AV et al., Lysine requirements of healthy adult Indian subjects, measured by an indicator amino acid balance technique. Am J Clin Nutr. 73(5):900-7, 2001.
  2. Kurpad AV et al., Lysine requirements of healthy adult Indian subjects receiving long-term feeding, measured with a 24-h indicator amino acid oxidation and balance technique., Am J Clin Nutr. 76(2):404-12, 2002.
  3. Kurpad AV et al., Daily requirement for and splanchnic uptake of leucine in healthy adult Indians. Am J Clin Nutr. 74(6):747-55, 2001.
  4. Kurpad AV et al., Leucine requirement and splanchnic uptake of leucine in chronically undernourished adult Indian subjects. Am J Clin Nutr. 77(4):861-7, 2003.
  5. Widdowson EM et al., Body composition of the fetus and infant. Nutrition and Metabolism of the Fetus and Infant. London, Nijhoff, pp 169–177, 1979.
  6. Borgonha S et al., Threonine requirement of healthy adults, derived with a 24-h indicator amino acid balance technique. Am J Clin Nutr. 75(4):698-704, 2002.
  7. Kurpad AV et al., Threonine requirements of healthy Indian men, measured by a 24-h indicator amino acid oxidation and balance technique. Am J Clin Nutr. 76(4):789-97, 2002.
  8. Lazaris-Brunner G et al., Tryptophan requirement in young adult women as determined by indicator amino acid oxidation with L-[13C]phenylalanine. Am J Clin Nutr. 68(2):303-10, 1998.
  9. Rand WM et al., Meta-analysis of nitrogen balance studies for estimating protein requirements in healthy adults. Am J Clin Nutr. 77(1):109-27, 2003.
  10. Paul AA et al., First supplement to McCance and Widdowson's The Composition of Foods. London, Her Majesty's Stationery Office, 1980.
  11. ExPASy proteomics server. Swiss institute of Bioinformatics
  12. Millward DJ, An adaptive metabolic demand model for protein and amino acid requirements. Br J Nutr. 90(2):249-60, 2003.
  13. Energy and protein requirements. Report of a Joint FAO/WHO/UNU Expert Consultation. Genebva, World Health Organization, 1985 (WHO Technical Report Series, No. 724)

アミノ酸の必要量決定のための一般的方法

1. 窒素出納法

コンセプト 概略の方法
  • アミノ酸が体の主要な窒素含有物質であるため、体の窒素の増減はアミノ酸の増減と同義である。
  • アミノ酸の摂取が十分であれば体の中の窒素量は一定である。一方、減少していればアミノ酸の摂取が不十分である。
  • アミノ酸の維持が健康と同義と仮定する。
  • 窒素のすべての摂取量と損失量を正確に定量し、(摂取量)-(損失量)の差を求める。
利点 欠点
  • 古典的方法
  • 食べこぼし、食べ残りなど摂取されかった量も摂取量に含めて、摂取量を多く見積もる可能性がある。
  • すべての損失量を定量できず、損失量を少なく見積もる可能性がある。
  • その結果、アミノ酸の必要量を低く見積もる可能性がある。
  • 実験食への適応に1週間以上の期間を要する。

2. 炭素出納法

コンセプト 概略の方法
  • アミノ酸の必要量は、すべての損失量と釣り合う摂取量である。
  • 評価対象アミノ酸のカルボキシル基を標識した安定同位体を静脈内注入後、呼気中標識二酸化炭素の排出率を測定し、当該アミノ酸の酸化率を算出する。
  • 24時間プロトコール、摂食のみプロトコール(注入3~5時間)、短期絶食/摂食プロトコール(注入8時間中、絶食3時間+摂食5時間)がある。
利点 欠点
  • 方法は洗練されており、誤差を生じる可能性がある重大な要素はほとんどない。
  • アミノ酸酸化の測定には、4~24時間を要する。
  • 安定同位体注入、採血及び安定したCO2生成率のため、被験者はベッドあるいは椅子に拘束される。
  • 食事のパターンが必ずしも正常な1日を代表していない。
  • 必要量付近において、十分に異なる量で摂取させることは難しい。

3. 指標アミノ酸酸化法

コンセプト 概略の方法
  • 食事に含まれているアミノ酸が必要量以下であれば、他の必須アミノ酸をたんぱく質合成に十分に利用することができず、余剰分は酸化される。
  • 一定量の指標アミノ酸のカルボキシル基を標識した安定同位体を経口摂取させ、呼気中標識二酸化炭素の排出率を測定し、評価対象アミノ酸の各摂取量における指標アミノ酸の酸化率を算出する。
  • 被験者は、評価対象アミノ酸の摂取量を変えてこの手順を6回あるいは7回繰り返す。
  • 酸化率曲線の変曲点を求める。
利点 欠点
  • 評価対象アミノ酸とトレーサーは別なので、大量の指標アミノ酸を与えることができる。
  • 出納測定を行う必要がなく、異なる摂取量に対して事前に食事を適応させる必要がない。
  • 他の方法とは理論が異なるため、この方法で得られた測定結果と従来の出納法におけるアミノ酸必要量との関係は複雑である。
  • 成長段階と比較して、成人では全体的に出納が平衡状態にあり、変曲点の算出が難しい。
  • 食事のパターンが必ずしも正常な1日を代表していない。

4. 不可避窒素損失量からの予測

コンセプト 概略の方法
  • 個々のアミノ酸は、全身のたんぱく質中のアミノ酸の存在量に比例して、無たんぱく質食を与えた被験者の不可避窒素損失量に寄与している。
  • 不可避酸化損失量(mg/kg/日)=不可避窒素損失量(mg N/kg/日)×アミノ酸(mg/組織窒素g)
  • さらに利用効率で調整する。
利点 欠点
  • 実験データがないアミノ酸について、値を出すことができる。
  • ただ1つのアミノ酸のみ、すなわち維持のための代謝上の要求量の組織たんぱく質含量に対する比が最も高い制限アミノ酸、についてのみ必要量を確認することができる。

参考資料

Protein and amino acid requirements in human nutrition. WHO Technical Reports Series 935.
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/43411/WHO_TRS_935_eng.pdf?ua=1