リジン

リジンはヒトの体内で合成することができない必須アミノ酸であるため、その分解は不可逆的です。リジンは白い結晶性粉末として炭水化物源の発酵によって生産され、無臭ですが若干の苦味があります。また、易水溶性ですがアルコールにはほとんど溶けません。

製剤分野では、リジン(通常、モノ塩酸塩の形態)は不可欠なアミノ酸製剤の成分として、また単純ヘルペス用の治療成分として使用されています(Griffith,1987)。

農業関連産業においては、リジンは特に豚や鶏用の家畜用飼料の必須成分です。

ヒトの栄養分としては、リジンは穀物を主食とする場合の第1制限アミノ酸として認識されており、発展途上地域の貧困層に不足しています(Scrimshaw, 1973)。リジンが不足気味の食生活を送っている民族的、文化的に多様な層において、リジンの強化によるタンパク質の品質の著しい改善やその後の子どもの成長の促進について記録されています(Pellet & Ghosh,2004; Hussain,2004;Zhao,2004)。最近の研究によれば、急性感染症の疾病状況でリジンやその他の必須アミノ酸の必要性が高まることが示唆されています(Kurpad,2003,Smriga,2004)。アフリカ西部の人々に対する最新の研究によれば、食事におけるリジンの補給により、子どもの下痢やヒトの呼吸器疾患の罹患率を軽減させることができました(Ghosh,2010)。あるICAAS会員企業では、上記の臨床データ(図)をふまえ、アフリカ西部における研究と開発を積極的に進めています。

ヒトの食事における上限摂取量に関して、リジン摂取の副作用を示す記録はほとんどありません(第6回 アミノ酸の食事による適量摂取の評価に関するICAASワークショップ)。米国においては、食品からの主要なリジン摂取量は1日1人当たり5.3グラムでした。単純ヘルペス治療において遊離リジンを1日約3-6グラム追加投与しても副作用が報告されなかった複数の治験結果があります。

栄養補助食品によるリジンの摂取は、多くの場合は塩酸塩の形態によります。塩化物の大量摂取は高クロル性アシドーシスを誘起することがあり、これは酸の過剰負荷を処理できない腎不全の患者にとっては有害であり、サブグループにおいては塩化物の摂取に配慮しなければなりません。しかし、現在閲覧できる文献によれば、食生活からのリジンの過剰摂取によるものと明確に判明した有害性の報告はなく、(必要に応じて)代謝の限界値が許容上限摂取量を設定する唯一のアプローチとなりうることを示唆しています。本アプローチは、既知の副作用のない内因性物質の上限摂取量コンセプトの利用を提案しているFAO/WHO栄養素リスク評価ワークショップにおけるアプローチと並行しておこなわれます。

参考文献
1.Ghosh, S., Smriga, S., Vuvor, S., Suri, D., Mohammed, H., Armah, S., Scrimshaw, N. S. (2010). Am J Clin Nutrition, 92, 928-939.
2.Griffith, R. S., Walsh, D. E., Myrmel, K. H., Thompson, R.W., Behforooz, A. (1987). Dermatologica,175, 183-190.
3.Hussain, T., Abbas, S., Khan, M. A., Scrimshaw, N. S. (2004). Food and Nutrition Bulletin, 25(2):114-22.
4.Kurpad, A. V., Regan, M. M., Raj, T., Vasudevan, J., Kuriyan, R., Gnanou, J. (2003). Am J Clin Nutrition, 77, 101-108.
5.Pellett, P.L., Ghosh, S. (2004). Food and Nutrition Bulletin, 25, 7.
6.Scrimshaw, N. S., Taylor, Y., Young, V. R. (1973). Am J Clin Nutrition, 26, 965-972.
7.Smriga, M., Ghosh, S., Mouneimne, Y., Pellett, P. L., Scrimshaw, N. S. (2004). Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 101, 8285-8288.
8.The 6th Workshop on the Assessment of Adequate Intake of Dietary Amino Acids (2007). J. Nutrition, 137, Supplement.
9.Zhao, W., Zhai, F., Zhang, D., An, Y., Liu, Y., He, Y., Scrimshaw, N. (2004). Food and Nutrition Bulletin, 25, 123-129.

・Lysine and herpes recurrence
・Lysine as the 1st Limiting amino acid in cereals
・Effects of L-lysine supplementation on the health and morbidity of patients in poor households around Accra (Ghana)

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